身近に拒食症や過食症の患者さんがいる方
に向けて
摂食障害の症状を無理にやめさせるべきではない理由
をご紹介します。
結論から述べると、症状を無理にやめさせるべきではない理由は、症状がさらに悪化するからです。
本文で詳しく紹介するので、ぜひ参考にしてください。
Contents
「摂食障害の症状を無理にやめさせる」とは

まずは「摂食障害の症状を無理にやめさせる」とはどういうことなのかご紹介します。
•「もっと食べなさい」と言う
•「そんなにやせて大丈夫なの?」と言う
•「よく食べられたね。偉いね」と言う
•「あなたが食べられないものを家族だけ食べるなんて申し訳ない」と言う
•体重を増やすために、食事を本人が決めているよりも少し多め盛る
•「過食をやめなさい」「吐くのを我慢しなさい」と言う
•「飢えている国の人たちのことを考えなさい」と言う
•過食中に邪魔をする
•過食や過食嘔吐した本人に不愉快そうな顔をする
•食べ物を家にストックしないようにする
•食費を計算してため息をつく
•過食や過食嘔吐しなかった日に褒める
上記の通り、直接言葉で表現しなくても
「もっと食べなさい」
「過食をやめなさい」
「吐くのをやめなさい」
というメッセージが含まれる言動はすべて、摂食障害の症状を無理にやめさせようとしているといえます。
摂食障害の症状を無理にやめさせようとすると症状が悪化する

摂食障害の症状を無理にやめさせようとすると、拒食症にしろ過食症にしろ症状が悪化します。
理由を
①「拒食」の場合
②「過食」の場合
の順にご紹介します。
①「拒食」の場合
引用をご覧ください。
そもそも、「拒食」のときには、不安に吹き飛ばされないように「拒食」にしがみついているといえます。それなのに家族は、「そんなにやせていたら不健康だから、もっと食べなさい」「こんなにやせて、家族に迷惑をかけるなんて……」などといって、「拒食」にしがみつく手を無理に離そうとしたり、さらなる不安の嵐に陥れたりしてしまうのです。しがみつく力がますます強くなるのも当然のことだといえます。
引用:水島広子著『拒食症・過食症の正しい治し方と知識』
「拒食」を発症しやすいのは、「自分一人で努力すれば何とかなる」という今までのルールが崩れ、「遭難したような不安」を感じたときです。
たとえば
中学校のテストでは良い成績をとれていたのに、高校に進学したらどんなに頑張っても良い成績がとれなくなった
場合、「勉強を頑張れば良い成績が取れる」というルールが崩れ
といった不安を感じます。
そんなときに安心感を与えてくれるのが体重。
なぜなら体重だけは、「食べなければ痩せる」という今までのルールが通用するからです。
「拒食」の患者さんは体重を低く保つことで安心感を得て、なんとか生き延びているといえます。

そんな患者さんに対して、「もっと食べなさい」などと言って、症状を無理にやめさせようとすると
・唯一安心感を与えてくれる体重で、安心感を得られるなくなる
・大切な人が自分の気持ちを理解してくれない
ため、不安が強くなります。
不安が強くなると、安心感を得られる体重によりしがみつこうとするので、結果的に「拒食」の症状は悪化します。
②「過食」の場合
周囲は「過食」の人に対して、「いいかげんにやめなさい」ということが多いです。過食をやめられないのは本人の意思の問題だということを伝えているのです。そうすると、本人は、「自分は意思が弱い、だめな人間だ」と思い、ますます自分を嫌いになります。
引用:水島広子著『拒食症・過食症の正しい治し方と知識』
自分を嫌いだと思う気持ちが「過食」につながるわけですから、病気を発症したあとの周囲の対応は、「過食」をますます悪化させるエネルギーを生み出しているのです。
引用:水島広子著『拒食症・過食症の正しい治し方と知識』
過食しやすいのは、「自分のことが嫌いな気持ち」や、「モヤモヤしたネガティブな気持ち」などのストレスをためたときです。
なぜなら過食や過食嘔吐で自分の感覚を麻痺させると、一時的にストレスから逃れられるから。

過食や過食嘔吐でストレスから逃れている患者さんに対して
「食べるのをやめなさい」
「吐くのをやめなさい」
と言って症状を無理にやめさせようとすると、患者さんは自分の感覚を麻痺させる方法を失い、よりストレスをためます。
このストレスはさらに大きな過食のエネルギーを生み出すことに。
また症状を無理にやめさせられると
と自分を責めてしまい、「自分のことが嫌いな気持ち」がたまるので「過食」の症状はさらに悪化します。
患者さんは症状をコントロールできない

そもそも摂食障害は病気であるため、患者さんは「過食」や「拒食」の症状をコントロールできません。
インフルエンザになったときに、すぐに高熱を下げられないのと一緒です。
大切なのは症状を無理やめさせることではなく、「一生治らなくてもいい」くらいの気持ちで、患者さんのありのままを無条件に受け入れてあげることです。
その方が患者さんも安心感を得られるので、摂食障害を克服しやすくなります。
